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靴から起こる足トラブル。
靴タイプ別の注意点
「履きたい靴」と「足の健康に良い靴」は必ずしも同じではないため、靴の影響で足にトラブルが起きてしまうことがあります。痛みがあるのに、「おしゃれのため」「仕事だから」と我慢をするのはツライですよね。靴タイプごとの足への影響を知り、足トラブルの予防と対策に活かしましょう!
靴が足トラブルを引き起こすことがある
足そのものは健康な状態であっても、履いている靴の影響を受けて、痛みや変形を起こすことは珍しくありません。外反母趾、ハンマートゥ、陥入爪、タコなどがその例で、靴を変えるだけで症状が落ちつくこともあります。例えば、陥入爪、いわゆる巻き爪を起こす原因は、爪の生え方にあるように思われがちですが、爪は健康な状態で、まわりの皮膚や脂肪が爪に食い込んで起きるケースが多くあります。本当の原因は、きつい靴を履いて足の指が圧迫されたり、ぶかぶかの靴を履いて足の指と靴がぶつかりあったりすることです。外反母趾やハンマートゥ、浮き指などの足の変形によって、足が正しく接地しなくなって皮膚や脂肪がよれることも原因になります。

靴のタイプと足への影響
●かかとが高い靴・先細りの靴
ヒールに代表されるようなかかとが高い靴を履くと、つま先立ちのような格好が長時間続きます。これは、足の指の付け根が過度に反った状態が続くことになるため、足指の付け根の関節がゆるくなり、親指が曲がりやすくなります。また、先細りの靴を履くと、親指は隣の指の方に圧迫されます。かかとが高い靴や先細りの靴を履くことで、足指の変形や痛みを引き起こす「外反母趾」になることがあります。
●きつい靴
足の親指を除く指には、多くの筋肉があります。複数の筋肉が連なり合うため、スムーズに曲げたり反ったりすることができます。きつい靴を履くと、足指はぐっと曲がった状態になります。筋肉や腱は形に合わせて連なりを変える性質があるため、指の変形に対応してしまいます。すると、足指が曲がった状態で固まってしまう「ハンマートゥ(かがみ指)」につながります。
●ゆるい靴・脱げやすい靴
靴がゆるいと、脱げないようにするため、足指を丸めて踏ん張り続けなければなりません。きつい靴を履いたときと同じで、足指が曲がった状態で固まってしまうため、ハンマートゥ(かがみ指)につながります。足指が反ってしまい、直立したときに足指が地面に付かなくなる「浮き指」の原因もゆるい靴や脱げやすい靴を長時間履くことだと考えられます。
●フラットな靴
フラットな靴は、かかとの高い靴などに比べると歩きやすいように感じますが、足にフィットしづらく、安定性が良くないことがあります。ゆるい靴や脱げやすい靴と同様に足指を丸めて踏ん張り続けなければならないため、「ハンマートゥ(かがみ指)」や「浮き指」の原因になるでしょう。フラットな靴で歩くことは、足のアーチを過度につぶすような動きになります。そのため、アーチを崩すことも「外反母趾」や「ハンマートゥ(かがみ指)」の原因になります。

かかとが1~1.5cm高い靴がベスト
歩くときには、かかと、つま先と接地し、最後に親指で踏み込むと体重移動が起きます。かかとが1~1.5cm高くなっていると、体重移動をしやすいため、歩行がスムーズになります。機能的なスニーカーの多くは、かかとが1~1.5cm高くなるように設計されています。
かかとの高さに加えて、次の条件を満たすのが足の健康に良い靴です。
●Point.1 靴紐を結ぶ
足の甲をしっかりと固定できると足の動きが機能的になります。
●Point.2 つま先にゆとり
靴を履いたときに、1~1.5cmのゆとりがある靴を選びましょう。靴の先端につま先が当たってしまうものは、サイズが合っているとはいえません。
また、靴による足トラブルを引き起こす根本的な原因になるのは、「家を出たときから帰宅まで同じ靴を履き続ける」ことです。海外では特定のシーンのための靴を一日中履き続けることはせず、足の健康のための靴と特定のシーンに履く靴を2足持ち歩き、履き替えて過ごすことが一般的です。一方、日本では、朝、ヒールを履いて家を出たら、夜までそのヒールで活動することがほとんど……。おしゃれや仕事と、足の健康を意識した靴とを履き分けていくことで、足トラブルは減っていきます。この機会に靴との付き合い方を考えてみませんか?

ドクター/菊池 恭太
ライター/岩崎 美帆